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Garmin Forerunner 965とApple Watchを両腕に装着する

up to date : 2024.08.08 Thu
Garmin Forerunner 965
Garmin Forerunner 965

レクリエーションランナーであり健康のため

マサチューセッツ州ボストン。朝の空気が熱を含む前に、私はいつものランニングコースへと向かいます。かつて村上春樹が足を進めたチャールズリバー沿いや、川内優輝、大迫傑が歴史を刻んだアスファルトの上、彼らの足音が響いたであろうこの道を、私もまた一歩一歩走り続けています。

 

ランニングという行為は、ただ体を動かし、急いで移動することではありません。時に瞑想であり、時に自己と対話する時間であり、時に無数のデータと向き合う瞬間でもあります。

 

今、私の左腕ではGarmin社のランナー用最高峰モデルForerunner 965、右腕ではApple Watchがそれぞれ忠実に時間と距離を刻み続けています。ウェアには”Run Hard, Risk Heartbreak”のプリントが輝き、それがさらに私を駆り立てるのです。

 

HeartBreak
Heartbreak Hill Running Company

初めてのレースと劣等感

今思えばただの人数合わせだったのかもしれませんが、ある日、ちょっとしたきっかけからボランティアの一環でボストンの5kレースに参加することになりました。

 

走ることに関して、これまで目標や規律などを課してきたわけではないけれど、フライフィッシングの補強として、少なくとも掃除機がけやゴミ出しの頻度よりずっと多く走り続けてきた私にとっては、気負うこともない、数少ない社交の場の延長にある簡単なイベントの一つとして了解していました。

 

しかし、その日、そこに名誉はなく、劣等感という形で自分の限界を知ったのでした。レースの中盤から、酸欠のために肢体は痺れ、視界はほとんどホワイトアウトし、意識を失いそうでした。肺は張り裂けそうで、脳と体の繋がりが途絶えてコントロールを失い、失禁の恐怖さえ感じました。

 

濡れた半紙のように弱った男を、何人ものランナーが置き去りにしていったことは言うまでもないでしょう。何とかゴールラインを越えたものの、完全に打ちのめされた、これが私の初めてのレース経験でした。

 

閉会式の時、表彰台に上がったエリートランナーが微笑みながら、「最初にしてはグッドジョブだよ。僕はもっと遅かった。」とリップサービスをくれました。その一言が、いつものように私を勘違いさせ、私の中の何かを刺激してしまいました。

 

「もっと早く、もっと遠くへ。」

 

※ただし私の筋力トレーニングや食生活を含む、全てのトレーニングの中核には、「50年後も継続できるであろうことをする」という命題が存在するので、短期間で好記録を目指している方とは努力の方向と選択にズレがあるはずです。

 

小さなレース
走ることを楽しむ人々

 

まずは練習メニューを設計する

私のようなレクリエーションランナーにとっての競争相手は自分です。昨日の自分より早く走るための要素を分解していくと「マインドセット」が根幹にあり「スピード」と「持久力」と「力を配分する知性」みたいなものが必要であることがすぐに理解できました。これらは、ランニングという単純な行為の背後に潜む、見えない支配者のようなものです。

 

今日では、データアナリストたちが科学的な根拠に基づいてそれぞれの要素をどのように向上させるかの方法を見つけ出しています。彼らは膨大なデータを解析し、最適なトレーニングプランを体系的に立案しました。VDOTテーブルなど、多くのランナーが利用している方法論も、その一例です。

 

※ここでは、具体的な内容と方法については触れません。なぜなら、私が伝えたいのは、データや数値によってランニングがどのように変わるかという話ではなく、Garmin Forerunner 965とApple Watchの併用がかっこいいという話だからです。

 

Apple Watchはなくてはならない存在

ちゃんとしたトレーニングを実践し始めた時、私の手首にはいつもApple Watchがありました。この腕時計は現代の技術の結晶のようなもので、小さなタッチパネルには無数の機能が詰め込まれています。しかし、走りながらその小さな画面を操作するのは、いつも一苦労でした。揺れる体と汗ばんだ指ではスクリーンが反応しないこともあるし、小さな数字を正確に読み取るのはさらに難しいのです。

 

走ることは単純なようでありながらも、深い集中力を要する行為です。重心と接地のポジションを意識しながら、地面からの反発を顎や腕も使って絶妙にコントロールすることで、地球の重力を推進力に変えていく連続的な営みです。一連の動作が呼吸と連動し、そのリズムが全てを支配します。

 

その中で、トレーニングを正確に管理しようとすると、効率的なストップウォッチ機能が不可欠になるわけです。私は走りながら400メートル毎、あるいは1キロメートル毎に画面をタッチし、必要な情報を取得しなければなりません。ちょうどバスの運転手がアナウンスとドアの開閉をしかるべきタイミングで完璧にこなすように、この繰り返しにはミスがあってはならないのです。

 

Apple Watchを使い続けるうちに、技術が進歩しても、その使い勝手は必ずしもランナー用ではないことに気づきました。画面が小さく、操作が繊細なため、ランニングのようなダイナミックな動きには不向きなのです。

 

Garmin Forerunner 965
Garmin Forerunner 965

965はランニングウォッチの最高峰

ランニング中のストレスから解放されるために、私は違うタイプのスマートウォッチを試してみることにしました。チタニウム製のベゼルと物理ボタンを備えたもう一つのデバイスは、画面も大きく数字も一目で理解できる。走りながらでも、その操作性には安心感があり、まるで古い友人との会話のように自然でした。

 

ボストンマラソンやオリンピックを観戦していても、多くの選手がGarminでペース管理しているし、トラックや信号待ちで見かける多くのランナーがそれで必要なデータを収集しています。その姿はまるで、彼らが自分自身の能力を完全にコントロールしているかのようです。私もまた、その時計を手に入れたとき、何か大きな力を手に入れたような気がしました。

 

円形のディスプレイに映る数字は、ただの数字ではなく、私の走りを形作る重要な要素となります。瞬間瞬間の心拍数、スニーカーの反発、アスファルトの感触まで、全ての現象が、その時計とともに新たな意味を持ち始めるのです。

 

もちろん、Forerunner 965はスマートウォッチとしても十分な機能を兼ね備えています。スマートフォンからの通知を受け取ったり、非接触での支払いが可能なことは、日常生活をより快適にしてくれるでしょう。

 

Garmin Forerunner 965を買う理由は?

Garminは私たちの生体情報と位置情報からデータを収集・集積し、それらを処理してランニングに特化した貴重なヒントを提供してくれます。その他にもStravaと連動できること、トレイルランにおける地図機能の精度、トレーニングプランの提供機能、様々なスコアリング機能など、数えきれないほどの特徴を挙げることができますが、現段階では私の行動にあまり影響を与えないので、ここでは差し引いておきます。

 

私がForerunner 965を選ぶ理由は、以下の4点に集約されます。

 

1 GPSの精度が高い
Forerunner 965は移動距離の計測が正確で、ペースなどの指標をApple Watchよりもタイムリーに表示します。

 

2 物理ボタンでの操作
物理ボタンによる操作は、Apple Watchの時によくあった空振りタッチがないため、スムーズで確実です。

 

3 画面が大きく数字が見やすい
画面の大きさと明瞭な表示は、走っている最中でも数字がぶれずに見え、何度も確認するストレスから解放されます。

 

4 バッテリーの駆動時間が長い
私はディスプレイを常時点灯モードで使用しているため、バッテリー消費は激しいですが、それでも数日間は問題なく使用できます。バッテリーの残量を気にしてランニングの出発時間が遅れることもありません。

 

Boston Marathon
ボストンマラソンのゴール付近

どっちを買うべき?

ある夜、友人からフェイスタイムがかかってきました。彼は最近健康に気を使い始めており、どのスマートウォッチを買うべきかと私に相談してきたのです。彼はランニングも始めたいと考えているものの、まだその一歩を踏み出していない状況です。

 

「どっちを買うべきだと思う?」彼の声には、新しい一歩への期待とわずかな不安が混じっていました。

 

私は少し考えてから答えました。

 

「もし本気でランニングを考えているならば、Forerunner 965のような専門的なランニングウォッチがいい。でも、もしランニングがたまの趣味で、日常生活の便宜を重視するなら、Apple Watchが最適だよ。まずはApple Watchを購入し、現代人らしい生活を手に入れるんだ。もしiPhoneを使っているならなおさらApple Watchがいい。その連携の良さは、他のどのデバイスにも負けないからね。」

 

「本気とは?」彼が聞き返しました。

 

「本気の人間は、本気の定義を他人に聞かないものだよ」

 

私の答えに、友人は「なるほど」と言いました。

 

選択は人それぞれですが、それぞれのライフスタイルに最適なものがあるはずです。靴の趣味、着る服のテイスト、サングラスのタイプ、食べる物、住む場所、ランニングウォッチ一つを選ぶことが、意外とその人の生活を映し出す鏡のようなものかもしれません。

 

Apple Watchユーザーは両方装着するべき

この記事を読んでいる人の中で最も多い層は「Apple Watchを持っていて、かつGarminの購入を迷っている人」であるはずです。私もその一人でした。私は長い間Apple Watchを使ってきました。それはテキストのチェック、SNSの通知、Siriとの対話、さらには健康管理まで、一日の大部分をサポートしてくれる素晴らしいデバイスです。しかし、ランニングとなると話は少し変わってきます。ランニングはただの移動ではなく、自己と向き合う宗教的な時間です。そのためには、もっと専門的なツールが必要だと感じ始めたのは自然な流れでした。

 

そして、私はある決断をしました。左腕には走ることに特化したGarminを、右腕には生活に密着したApple Watchを装着することに決めたのです。

 

一般的には、二つの時計を同時に身につけることに疑問を抱くかもしれません。もしかしたら見た目も少し異質かもしれません。しかし、この組み合わせが私にとってどれほど意味があるかは、試してみなければ理解することはできませんでした。その少しの違和感を超えたところに、新しい発見があったのです。

 

両腕に装着することを不快に感じることはありませんし、見た目が悪いこともありません。ランニング中にGarminが提供する精密なデータと、日常生活でApple Watchがもたらす便利さ。この二つの組み合わせは、私の生活をより豊かにしてくれています。

 

また、Apple Watchを右手にスイッチした際のデータの差異について心配する声もありますが、個人的にはそれほど変化があるようにも思えないですし、たとえ左右でわずかなギャップが生まれたとしても、それを理解した上で、継続してデータを集積していきたいです。外してゼロにするよりも。

 

この選択は、私にとって新たな扉を開きました。ふたつの世界をひとつの体験に結びつけるこの方法は、多くのランナーにとっても新しい可能性を提供するかもしれません。そして私は、この二つの時計を見るたびに、自分が選んだ道に確信を深めています。

 

もう一度。Garminの「Forerunner 965」を買う理由が、驚くに値しないたった4つのシンプルなものであっても、何かの間違いでそれを紛失したら迷わず再購入します。もうそこに大きな意味があることを知っているからです。

 

もし私が走り続けること、継続することを失ったら、私は全てを失うでしょう。

 

次山嘉一

category : /   |  posted by : Yoshikazu Tsugiyama