マサチューセッツ州ボストンで考えること
私も一年が経ちました
同僚の新田が台湾移住の記事を書いたので、私も同じテーマで書いてみます。
私は「日本人は〜だ」「アメリカ人は〜だ」「男性は〜だ」「女性は〜だ」「若者は〜だ」「老人は〜だ」「ミュージシャンは〜だ」「会社員は〜だ」というふうに大きなセグメントで乱暴にくくるジャッジメンタルな振る舞いをする人間ではありません。(※なぜか?)どうぞ読み違いの無いように、あくまで私の目の前で起きている物語、個人的な視点から見える一場面を想像して読んでいただけると幸いです。
※目に見えているだけの情報はけっこう間違っていて恥ずかしい。
※統計学の観点からデータが少なすぎて恥ずかしい。
※たとえ統計上の根拠があったとしても私が目指す洗練された社会像のマナーとして恥ずかしい。
住むということ
生活拠点を国境を超えて移す、ということはもはや一大事業です。ビザの問題、保険の加入、ソーシャルセキュリティナンバー、車の免許、収入、税金、高額な医療費、住宅、インフラ、物価差、言語、銃社会、などなど挙げればキリがないほど備えるべきことが存在します。
しかしシンクメディアの他のメンバーと同様に、自ら望んだものの代償であればそれらの苦労はとても小さく感じるものです。
東京からボストンに移り一年が経ちました。今言えるのはここは単なる都市ではなく、過去と未来の文化が交わる場所、知識とイノベーションが生まれる場所であるということです。
バイブスって何?
私が最初に気づいたことの一つは、街が持つエネルギーでした。 ストリートにはアメリカで最も古い歴史的背景と現代のトレンドが融合した紛れもないポジティブバイブスが漂っています。
レッドソックスの本拠地であるフェンウェイパーク、ボストン美術館をはじめとする多くのミュージアム、ボストン交響楽団、ボストンバレエ団、高級ブランドからビンテージショップまで、また伝統的なティールームからサードウェーブのカフェまでが点在し、時間を持て余すことや、引きこもりスペースの選択肢に困ることはありません。石畳とレンガの歴史的建造物が現代の高層ビルとシームレスに融合し、ボストン独特の景観を生み出しています。また私が感じるこのポジティブバイブスは若者が多い人口構成に因るところも大きいかも知れません。
人生はずっと勉強
あるいはアカデミックな街という印象も強いです。世界で最も権威のある教育機関と医療機関が多く存在します。カフェでコーヒーを飲んでいると画期的な研究や革新的なスタートアップについての会話を耳にすることは珍しくなく、このように行きつけのカフェやマンションのコミュニティルームが、次の大きなアイデアの出会いの場になる可能性があります。
世界中から学者、研究者、医師、学生、起業家が集まり、知性と情熱がひとつに集中する場所は貴重ですし、このような知的活力に囲まれると爽快です。常に学び、成長し、挑戦できる場所といえるでしょう。例えば、私の住むマンションの同フロアには8部屋あり、少なくとも7人の医者が住んでいるという異常な偏りです。例えば、かつて村上春樹大先生が走っていたチャールズリバー沿いは私のランニングコースでもあります。
口先だけのダイバーシティにあばよ
この豊かな環境は、同時にボストンが極めて多様であることも意味します。世界中から人々が集まる人種のるつぼでは、人はそれぞれ自分の文化、物語、経験、主張を持っていて、その空気が街を活気づけるだけでなく、様々なバックグラウンドを持つ人々を寛大に受け止めてくれます。例えば世界各国の料理が食べられたり、他人に干渉しすぎなかったり、ジェンダーレストイレが多かったり、アンダーウェア同然の格好で歩いていても誰も咎めなかったり、年齢や身体的特徴を口にしない、などなどなどなど。
ここに来れば「多様化」が単なる流行語ではなく、生きた現実であることを発見できるでしょう。異なる文化、アイデア、視点、個性に対する真のリスペクトがあるので、恐らく私も知らず知らずのうちに、これまで存在していた同調圧力から解放されていると思います。外部からの期待や偏見の重みにとらわれることなく解放的な気持ちになります。
なぜ私は幸せなのか?
ここまで、ボストンでの生活がいかに私を幸せにしているかについて書いてきました。しかし「幸福度」の観点で掘り下げてみると、住む場所は大きな問題ではないような気がします。それは私たちが自分にあった環境を選び、良い生活を構築する上で付随的に現れる要素なのではないでしょうか。
ハーバード大学のロバート J. ウォルディンガー博士の幸福に関する研究では「人間関係が最も重要である」と結論づけられています。
2016年に現在の私の自宅の近所で行われたTEDでのプレゼンテーションが有名です。日本語字幕でも観ることができるので後ほどゆっくりご覧ください。
また最近、日本語でも書籍が出版されたので是非読んでみてください。
ロバート J. ウォルディンガー博士は精神科医であり、成人の生活と幸福に関する世界最長の追跡研究をしている Harvard Study of Adult Development の所長です。ある環境ではなぜ別の環境よりも幸福感を感じるのかを説明するために応用できる重要な研究結果がいくつかあります。
人間関係が最も重要
この研究で得られた最も重要な発見の一つは、人間関係が私たちの全体的な幸福に大きな影響を与えているということです。新しい住環境が協力的で良い人間関係に囲まれている場合、幸福度が大幅に向上します。有意義なつながりを見つけた場合、または社会環境がそのようなつながりを形成しやすいと感じた場合でも、幸福感が高まるのはこれで説明できます。
量より質
単に多くの人間関係を築くことだけではなく、その質が大切です。引きこもりであっても頻繁に会わない家族、会ったことのないネット上の友人、数少ない友人を良好な関係のみで固めるべきです。安全、サポート、理解されていると感じることが極めて重要です。前述の多様性と受容性の高い環境により、このような質の高いつながりを育みやすくなります。これまで社会の期待や同調圧力、本当の自分を表現するのが難しいと感じていた人にとって、新たな環境は新鮮なコントラストをもたらすかもしれません。
身体の健康と幸福
健康と幸福の間には相互関係があります。この研究では人間関係においてより幸せで満足している人は、80代になってもより健康であることがわかりました。タマゴが先かニワトリが先か分かりませんが、私の場合、釣り場、運動しやすい環境、アクセスしやすい公園、健康意識の高いコミュニティ、安全な食の選択肢など、身体の健康を促進するライフスタイルを提供してくれるなら、それは間接的に私の幸福に貢献するはずです。
シンクメディア、なんなの?
住環境から始まり、脱線して幸福度との関連性についての考察を書いてみました。シンクメディアのメンバーは皆、地理的な制約や社会的なプレッシャー、商習慣の構造的な限界を押し広げている人々です。皆が私と同じくらい幸せでありますように。私はその人たちの将来にとても興味があります。