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ポジショニングの力──どこに立つかで未来は変わる

up to date : 2025.04.10 Thu

こんにちは。年度末の激務を終え、少し時間の感覚がずれている森です。
この数ヶ月、かなり激しくさまざまな企業のウェブプロジェクトに関わってきました。
そこで毎回ぶつかるのが、「この会社は、どこに立っているのか?」という問い。
企業らしさを表現するうえで、ポジショニングは避けて通れないテーマです。
今日は、そのあたりの話を少ししてみたいと思います。

「このやり方のままで、これからの時代を乗り切れるのだろうか。」
「技術や経験があるのに、なぜ事業が広がっていかないのか。」

事業を続けていると、そんなもどかしさにぶつかる瞬間があります。
そのときに立ち止まってみると、実は“どこに立っているか”という視点が、意外と盲点になっていたりします。

考える中小企業の経営者
自分の立ち位置が見えていないことは意外と多い

業界の中での立ち位置。地域での評価。

長く続けてきた企業であればあるほど、築いてきた信頼やブランドがあります。
でも、それがいつの間にか“守るべき前提”になってしまうこともある。

  • 「うちはこういう業種だから」
  • 「この地域で知られているから大丈夫」
  • 「このスタイルが自分たちらしいから」

その前提を無意識に抱えたまま、戦い方や発信を考えていませんか?

僕たち自身も、そういった“思い込みの中”で日々を過ごしています。
それが悪いということではなくて、人は誰しも、何らかの枠組みの中で世界を見ている。
だからこそ、時々その枠を少し外から眺めてみることを意識する。
そんな時間が大事なんじゃないかと思うんです。

枠の外にも目を向けてみる

戦う場所は、エリアでも業界でもない時代

最近は、エリアも業界も、境界があいまいになってきています。
どんな価値を、誰に、どんな文脈で届けるか。
その“立ち位置”によって、評価がまったく変わる時代です。

たとえば地方の加工食品メーカーが、スーパーの棚からEC直販へと切り替えることで、都市の健康志向の層に届くようになったり。
建材メーカーが、「扱いやすさ」ではなく「空間をつくる素材」として建築家向けに打ち出したことで、これまでとは違う市場の反応を得られるようになったり。

やっていること自体は変わらなくても、誰の世界で語るかによって、届く先が変わる。

そしてこの変化は、都市部やグローバルなビジネスだけの話ではありません。
地域ビジネスにおいても、消費者の“枠組みに縛られない感覚”が確実に広がってきている。

たとえば地元で愛されてきた商品やサービスが、
「価格が安いから」「近いから」ではなく、
「世界観に共感するから」「自分の価値観に合っているから」選ばれるようになってきている。

つまり、消費の動向そのものが、“エリア”や“業界”を前提にしないものへとシフトしつつあるということ。
その流れの中で、ポジショニングを見直すことは、どんなビジネスにとっても、決して人ごとではなくなってきています。


実は、動かなくても変えられることがある

「変わる」と聞くと、大きな転換や新規事業を思い浮かべがちです。
でも、もっと小さな“視点のずらし方”でも、変化は十分に生まれます。

ある歯科医院は、「最新設備がある」ではなく、「子どもが泣かない歯医者です」と打ち出したことで、子供連れの親子で毎日賑わう地域でも有名な存在になりました。

変えたのは設備ではなく、見せ方と立ち位置。
“誰のどんなニーズに立つか”を変えただけで、求められ方が一変したのです。

僕たちの事業にも、こういう変化の可能性が、きっと眠っている気がします。


視点を変えることで、見えるものがある

ポジションを見直すときに大事なことは、“視点の切り替え”です。
僕自身、デザイナーという立場で日々仕事をしていると、思いもよらない視点に気づかされることがあります。

ある時は、お客さまとの対話の中で。
ある時は、自分が当たり前のように扱っていた情報や言葉に違和感を覚えたときに。

視点の切り替え
別の視点で物事見た時に新しい発見がある

デザインの仕事って、「どう見せるか」を考えるだけではなく、
「何を、どの立場で、誰に届けるのか」という整理のプロセスそのものなんですよね。
だから、見た目のデザインを通して、実はポジショニングの再確認や再構築につながる場面が多々あります。

自分たちでは見慣れすぎて気づかなかったことが、
少し違う視点を通すだけで、まったく違う輪郭を帯びてくることもある。

だからこそ、自社のポジショニングを考えるとき、デザイナーの視点を取り入れてみるのは、とても有効だと思っています。
「整えてもらう」のではなく、一緒に考え、問いを深めていく伴走者として。
意外な発見がきっとあるはずです。

ちなみにプロである僕たちも自分のことになると、急に見えなくなる。
そんな時は別業種の仲間からアドバイスをもらうなんてことは日常茶飯事です。
たぶん、これは人間の脳の構造上の問題なんだと思っています。


いま、立ち位置をほんの少しだけ動かしてみる

僕たちにご依頼いただく企業の皆さまは、すでに技術も経験も豊富です。
けれど、その力が本当に“届くべき場所”に向けて発揮されているかどうか。

その立ち位置を見直してみるだけで、見えてくる景色が変わることもあります。

ポジショニングは、何かを無理に変えることではなく、
“いまの自分たちを、もう一度よく見つめる”という行為なのだと思います。

ディスカッションする様子
定期的に立ち位置を見直す

見る角度が変われば、意味も変わる。
意味が変われば、選ばれ方も変わる。

ポジショニングとは、「どこに立つか」を選び直すこと。
それは、これからの可能性に目を向けるひとつの方法なのかもしれません。

category : /   |  posted by : daisuke mori